Vまん、徒然

北の果ての素人ギター弾き、独り言

ザンボット3

f:id:zakkzakk0919:20170818131120j:plain

 

戦争をテーマにした映画かアニメが見たいなと思ってこれを選び、ここ最近ずっと見ていました。「無敵超人ザンボット3」。1977年のロボットアニメです。
リアルタイムで見ていた当時は小学校に上がるくらいの歳だったので、物語の深いテーマなどは理解できず、ただキャラクター・ヒーローとしてのメカだけを目で追い、主人公の小学生が小生意気でうるさいな、ぐらいに感じていただけでした。無理もありません。これは大人になってから見るべきアニメでした。リアルに戦争をテーマにした凄惨なドラマです。

宇宙から攻めてきた敵と戦う→街が破壊される→巻き込まれた人が死ぬ→その原因はザンボット3を擁する側の人間にあるという→市民から激しく非難される、という状況がたくさん出てきます。しかも、ザンボット側の人間も実は宇宙人なのです。彼らの祖先もまた、星を敵に滅ぼされて地球に逃れてきたのです。悪い噂を流布され、濡れ衣を着せられながらも悔しさの中で敵に向かっていきます。あまりに重い立場に置かれるから、あのような無邪気でわんぱくな少年を主人公のキャラに設定したのかもしれません。

敵は、地球の民間人の難民を集め、手術をし、爆弾を彼らの体内に埋め込み、人間爆弾を製造します。これは今で言う自爆テロのような描写です。降ってきた雨で、ちょうどいいから体を洗えと裸にされ集められます。ナチの愚行を連想させる忌まわしい光景です。人間爆弾だと自覚した人たちは他人のために距離を置き敵の下で爆発しようとします。勇んで向かった少年も、直前になって恐怖で嗚咽し、取り乱します。仲直りしたばかりの幼馴染のガールフレンドもこの人間爆弾にされ、ザンボットの移動基地の中で爆死します。

そして、身近な大事な仲間がとにかく次々死んでいきます。祖父も祖母も、父も母も、ザンボットのほかの操縦士のいとこたちも、親友である犬でさえも、基本的に敵に特攻して次々亡くなっていきます。お前はせめて生き残れ、すまんが先に逝く、と。

敵が主人公のカッペイに最後に問いかけるシーンは鬼気迫る問答です。「お前はなぜ我々に戦いを挑んだのだ」「地球を守るためだ」「自分たちのためにだけか」「いや違う」「地球のやつらに頼まれたのか」「俺たちの地球だから守るんだ」「地球のやつらがお前らに感謝などしないだろう」「そんなことはないみんないい人たちだ」「本当に大切な人を亡くしてまでも守る価値があったのか」「でも俺は地球が大好きなんだ」…

 

敵は、最後に意味深な言葉を残して滅びます。
我々は、宇宙の平和を保つための存在であり、悪の心に満ちた地球人を抹殺するために地球に来たのだと言います。
宇宙平和のためのパトロールをしていて、次の危険分子が地球人であると決定されたのだと。

正義とはいったい何なのか、立場による見方の違いとは、そして戦争が持つそもそもの無意味さと空虚さ。
通常子ども向けアニメでは敵を倒すと殺された人が生き返ったりしますがそんな生易しい描写は一切無しで、勧善懲悪で敵を倒したから一件落着とはいかない、現実味を帯びた物語であるといえます。

今緊迫した情勢の中、このアニメーション作品を、軍事衝突を起こしかねない世界的地位にいる人たちにこそ見てほしいと願います。