Vまん、徒然

北の果ての素人ギター弾き、独り言

人間椅子「新青年」

人間椅子30周年を記念するアルバム「新青年」。好きになって、応援し続けて、もう30年経つということか。それはすごいことだ。

ファンだからこそ、愛しているからこそ、今回その新譜の感想を、敢えて辛口で書こうと思った。今まではたとえ納得いかない部分があっても、がんばって好きになる努力をした。好きになれるはずだと自分を信じて、努力をした。しかし頭や体というのは正直なもので、此岸、萬燈籠、無頼、怪談、異端といった最近のアルバムと、収録曲がまるで一致しない。染みるように味わっていた頃はアルバムすべての曲目を覚え、曲順も覚え、歌詞も覚えたものだ。だから、これといった必殺ナンバーを見出せなかった本アルバムを、辛口評価したかった。
だが、初回限定特典の、レコーディング風景とメンバー2人ずつの対談を収めたDVD を見るにつけ、ああやっぱこの人たち好きだわ、素晴らしいわと、当然の伏線のように気持ちが戻ってくる。ファンというのは人柄や生き様を含めてファンなのだ。映像を見ながら、あぁなるほど、あぁそうだったんだと、ただひとりでうなづきながら見ている自分にハッと気づくものだ。30年間休むことなく、メジャーからドロップした時期も屈することなく、ライブを続け音源を出し続けてくれることに感謝を、世界一好きなバンドが今もなお前進している事実に喜びを、毎年会いに行けている幸せを噛み締めながら、中辛程度で、今の感想と思いを簡単に記しておこうと思う。

 

新青年』/人間椅子

1.「新青年まえがき」
ゾクゾクさせる始まり方、食い込んでくるワウ使いの重いリフ。初期を連想させる曲調だが、新しい。4パターンほど次々とリズムが変わっていくけど、まえがきという位置にするのならば、最初のひとつのパターンだけで2分くらいの序曲扱いにしても良かったかなぁと。

2.「鏡地獄」
二十世紀葬送曲のあたりに近いサウンド。Bメロで徐々に盛り上がってから導かれるメロディアスなサビが印象的で、なおさら1曲目が序曲ならこの曲が映えたのにと思う。

3.「瀆神」
研ちゃんのベースの音が良い!タメた感じの8ビート、リズムチェンジも自然でかっこいい。「こぞって〜…」はコーラスパートにしない方が良かったのでは。和嶋さんの声質がどうしても軽く感じてしまうから。

4.「屋根裏の散歩者」
イントロはアッパーファズとスライドかな。これも曲の雰囲気は二十世紀葬送曲の頃を思い出す。展開がドラマティックで、妖しいリフやフレーズがたくさん入ってる。

5.「巌窟王
ヘヴィでストレート。研ちゃんの曲はどこか安心して聴ける、張り詰めない良さがある。途中、「塔の中の男」っぽいリフも入る。これもサビの掛け合いコーラスは無くていいかな、ユニゾンなら良かったのに。

6.「いろはにほへと」
リフも歌もキャッチーで、途中に和のテイストもあり、名曲になるはずだったのだが、ドッキンやズッキンはやはり馴染まない。きっと慣れないだろうな。でもライブで女性たちはここで腕を上げるんだろうな。

7.「宇宙のディスクロージャー
これも研ちゃんのストレートでかっこいい曲。「宇宙遊泳」をさらにハードに、速くした感じ。特典DVDを見るともっと好きになる。

8.「あなたの知らない世界」
何回か繰り返し聴いていたらどんどん好きになってきた。リフと歌がとても合っている。サビのメロディアス感はM2の「鏡地獄」にも通じるものがあり、中間部のテンポが上がるところは何となく「蛇性の淫」を思い起こさせる。

9.「地獄小僧」
サビは特に「猟奇が街にやってくる」をテンポ落として能天気にしてハネさせたような感じ。これも、うらめしやーのコーラスはいらないかなぁ。

10.「地獄の申し子」
これも安心ゾーン、かっこいい!コーラス、掛け合いばっちり。「青い衝動」に近い疾走感。研ちゃんの曲で自由に弾く和嶋さんのソロって過去の作品を聴いてもどれも素晴らしい。

11.「月のアペニン山」
「リジイア」的な、アルペジオが美しいバラッド。和嶋さんがソロライブでやりそうな曲調。中間は「白昼夢」っぽくもあり、無機質さも。最後の数秒だけドラムが入るところ、この発想はなかなかほかのバンドには出せないなと思う。

12.「暗夜行路」
やっぱり研ちゃん節。力強いシンプルなリフ。泣きの要素もあるし、王道の70代風のリフ満載。

13.「無情のスキャット
映像付きで予習ができていたため、8分40秒の長さでもすんなり入ってきた。先行公開の効果って絶大。「見知らぬ世界」風の重くまっすぐ装甲車のように何かに向かい一途に突き進むリフ、中間のギターと歌の絶妙な絡み方、後半は椅子ならではのシンプルなリフに乗るアイオミ調のダブリングソロ。珍しいなと思ったのは、エンディングをピタっと切らないで余韻を持たせたところ。

14.「地獄のご馳走」
ボーナストラック扱いのラストソング。速い3連リズムで往年のプリーストあたりのヘヴィメタルを思わせる。歌詞が少しグロく過激だからボーナス扱いにして歌も聴き取りづらくして歌詞も載せていないのかな。

 
【総評】
なんだかんだ言ってやっぱりすごい、かっこいい、大好きだ。
ただ、特別30周年記念盤という感じがせず、今までの流れのニューアルバム。ジャケットの背景のベージュの色の雰囲気がどうしても各楽曲に付きまとい、これがもしも漆黒の本の表紙のようなデザインだったらもっとダークに引き締まったイメージになったのに、と思う。曲としては、当然ヘヴィなものから速いものまでバラエティに富んでるのだが、ここ15年くらいの和嶋さんのギターサウンドが乾いたトレブリーなもので、曲然として、陰湿さ、引き摺り感、まとわりつき感、粘り感が初期の頃ほど無いのも事実。しかしあくまでこれは長きに渡って愛し続けてきたからこそ言えるのだとも自負している。やはり最初の3枚は強烈すぎた。私みたいな古参な老害を新たなファンは煙たく思うのだろうが、今もなお変わらず応援し続けるところは全く同じ、むしろ負けはしないのだ。
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