Vまん、徒然

北の果ての素人ギター弾き、独り言

映画「人間椅子 バンド生活三十年」

 
 
 

時折黒い曇天を白い稲光りがつんざく中、ひとり車を弘前に走らせ。みんぱいで糸肉ラーメン食ってからの、映画「人間椅子 バンド生活三十年」鑑賞。なんて素晴らしいシチュエーションなんだ。

人間椅子の音楽は特定のジャンルに属さないと思うのですが、この映画もまたジャンル分けできない作品でした。普通、ミュージシャンを題材にした映画というのはパターンがあって、生い立ち〜出会い〜初出演〜順調な軌道〜人気〜スランプ〜確執〜離散〜再会〜新たな夢〜というものがほとんどで、いわばバイオグラフィのドキュメントになりがちです。しかしこれは違います。例えるならばツェッペリンの永遠の詩に近いかな。

まず、余計なもの一切を排除した演出。付け足し的なナレーションもテロップも皆無。発売されている書籍からの文章の抜粋を、無音の中に黒バック白字で合間合間に映し出すだけ。ひたすら生身の無修正の強力な演奏をもって観客に問いかけます。過去の映像もわずかに使われますが、紛れもない「今」にとにかく執着しています。イカ天に端を発する衝撃のデビューから、それこそ長い長い暗黒時代を経ているだけに、最近バンドを知った人へ向けた歴史解説モノにもしやすかったはずなのに、これでもかと「今」を。過去の遍歴ドラマーは一切銀幕には現れず、目指している場所が常に先にあることを、無駄な解説を使うことなくビシビシ伝えてきます。30年の節目もきっとひとつの通過点でしかなく、今までのような毎年新しい作品を作り上げてきたコンスタントな活動を、これからも淡々と続けていくのでありましょう。どこにも媚びることなく。

いくら動画サイト等の影響があって今ブレイクしたとはいえ、元来その素質・本質がなければそうなるはずもなく、しかもその個性はデビューから一貫して変わっていないのです。つまり、せっかくインパクトのあるデビューを飾ったのにもかかわらず、以後前線に出ることがなかったというのは、メディアなりプロダクションなりレコード会社なりの無能さ、もっときつく言うなればそれらの怠慢にほかなりません。同じスタイルでブレずに頑なに継続して、現にこんなに大きな存在になっているんですから。
スクリーンを見ながら、何度笑顔にさせられたことか。同時に、ずいぶん遠いところにまで行かれてしまったなあと、帰路ハンドルを握りながら少々の寂しさも噛み締めておりました。
これからも世界一愛するバンドに変わりはありません。健康でいつまでも素晴らしい音楽を創造していって欲しいと願ってやみません。

いい映画でした。

 
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